未来の可能性に挑戦──業界を越え、共に循環型社会を創る

マテックス株式会社 代表取締役社長松本浩志様×CFP Group CEO福田奈美絵

地域社会・経済との連携が私たちの使命

──松本氏が代表を務めるマテックス(株)は、窓ガラスやサッシの卸専門商社。昭和3年創業、90年以上の歴史を持つ老舗企業で、窓の卸業界を牽引する存在です。異業種ながら、会社の目指すべきビジョンやパーパス(存在意義)を明確にし、真の社会貢献を目指す姿勢は、CFPグループの経営理念とも相通ずるもの。脱炭素社会を実現するために業界の枠を越え、今できることは何か。弊社代表福田がお話を伺いました。


福田奈美絵(以下、福田)

私にとって松本社長は尊敬する経営者の一人です。業界・業種こそ違いますが、持続可能な社会の実現に向けた取り組みや地域社会への貢献など、我が社が目指すべきところと重なる点も多いように感じています。

松本浩志さん(以下、松本)

卸売事業に注力する中、地域に根差して長年活躍されている小売り事業者の皆さまをサポートしていくことが、私たちの使命であると実感しています。私はよく「業界の生態系」などと言っているのですが、自然界においても生態系のバランスが保たれなければ生き物は生きていけず環境破壊が起こります。産業界も似た構造になっています。数字にこだわるあまり地場産業を無視して業務拡大しても、はたしてそれで長続きするのでしょうか。目先の数字を追うことよりも、長く続けられるかどうかが大前提です。

会社が創業した昭和初期から現在に至るまで、経済的なメリットや価値を追求していく時代が続きました。しかし今、時代は大きく変化しています。私の会社では「窓から日本を変えていく」をビジョンとして、より良い環境やチーム作り、サービス品質の向上を目指しています。

「素材回帰の時代」──目指すべき場所は

──扱う素材は違えど、「ステークホルダーと共にカーボンニュートラルな明日をつくる」をパーパスとしているCFPグループとの共通点も多いようです。

松本

福田さんはプラスチック、私たちはガラスの領域で、「社会が期待しているビジネスモデルというものをどう再構築していくのか」考えるタイミングに来ているのではないかと思います。CFPの事業は、今まさに世の中から求められているサステナブルな循環型です。

私たちも目指すべきところはそこだと思っています。今は「素材回帰の時代」と言えるでしょう。商品そのものだけでなく、素材原料や製造プロセスも消費者から選ばれる条件になっています。もはや、従来の使い捨て消費の考え方では立ち行かない状況の中、社内でも新しい試みを進めています。例えば住宅の解体やリフォームでは窓ガラスが大量に出ます。今ではあまり作られなくなったレトロな味わいのある装飾入りの板ガラスも多い。いままでは廃棄されていたこういったガラスを洗浄、加工し、次の現場で使うことができるようなリユースモデルを作ろうとしているところです。

福田

劣化しやすいプラスチックは、通常そのままリユースできないのでガラスの持つ特性を生かしたやり方だと思います。今あるものを捨てずにクリーニングして生まれ変わらせるリユースはCO2の削減効果も高い。ただ、先ほど申し上げたようにプラスチックは素材の特質上それが難しいので、我が社では高熱でプラスチックを一度溶かして再生するマテリアルリサイクルを行っています。もう一つの方法は、廃プラスチックを原料やモニマーに戻して新しいプラスチックを作るケミカルリサイクル。主にこの二通りが私たちが取り組むプラスチック再生の方法です。

松本

CFPさんのビジネスモデルは、正直なところこれまでビジネス価値が高い分野として注目されることは少なかったと思います。環境負荷が大きくても、より儲かる方法を選択する企業が一般的だったはずです。ガラス業界もそうでした。リユースなんて、手間ばかりかかって利益の少ない分野に手を出す企業が少なかった。

ただ今の潮流はSDGsに代表されるようにサスティナビリティ重視です。社会的に必要なことを適正な範囲内でやる必要がある。それもボランティアではなくて、ちゃんと事業モデルにすることが求められる時代にあって、先行してそれを実践し、確たるポジションを作ったCFPさんの挑戦は経営者としても非常に注目しています。

福田

ケミカルリサイクル事業をはじめた十数年前は、松本さんが仰ったように、あまり価値がないというか、多くの人が手をつけたくない分野だったかもしれません。経済価値だけで物事を測る時代はとうに過ぎて、価値観が急速に変化していると業界にいて実感します。

私がプラスチック再生事業を始めたのは、ちょうどリーマンショックの少し後くらいの時期。それ以前はプラスチック業界では輸出が好調で、リサイクル品であっても、中国をはじめとしたアジア圏に輸出をするのが一般的な流れだったのですが、リーマン後に、その輸出の流れが止まってしまって、一気に産廃物が増えた時期がありました。その後、輸出は持ち直すのですが、今までの仕事のやり方でいいのかと危機感が生まれ、何か対応策はないだろうかと考えて行き着いたのがケミカルリサイクルだったんです。

業界を超えて──今、私たちにできること

──業界の枠を超え、社会環境を変えていくためにできることはあるのでしょうか。

松本

プラスチックは社会になくてはならない存在です。大量生産、廃棄される現状からいかにして環境負荷を抑えクリーンエネルギーに転換していくのか、かなり壮大なテーマだと思うんですよね。最後は消費者の意識が大きいと思います。消費者がリサイクルされたものを選ぶことが温室効果ガスの削減に繋がることが理解されるかどうか。

福田

今や大人よりも、小・中学生のほうがよっぽど、未来の地球のことを問題意識をもって考えているように感じることもあります。彼らは、環境問題がまったなしで取り組むべき課題であることを幼い頃から知っています。もしかしたらあと10年ほど経って今の子どもたちが社会に出てくる頃には、また世の中が大きく変わるかもしれないです。やはり消費者の意識が変わると生産者は変わらざるを得ない。プラスチック業界は、海洋プラスチックに代表されるような様々な環境問題に直面して、早急に変わらざるを得ないギリギリのところまで来ています。

松本

時代が変わるときは、一気に価値観が変わることはなくても、じわりじわりとでも変化が起きてやがてそれが大きなムーブメントになる。カーボンニュートラル社会の実現には、まずエネルギーロスを食い止める必要があり、我々にとっても引き続き重要なミッションだと考えています。これからの時代、社会課題のある領域をビジネスで解決していくことがひとつの命題だと思うんですよね。カーボンニュートラルやサステナブル社会の実現は、一社単独では難しいです。異業種、官民、産学連携を含め、コンソーシアムでやっていく必要のある大きいテーマではないかと。

──業界を超えて、どのような人と協同で未来を創っていきたいと思われますか?

松本

私は会社経営をする上で「言葉の力」というものの意義を強く感じています。企業のパーパスやビジョンを明文化することは、業界の枠を越えた仲間を作るという意味でも必要不可欠なものになってくのではないでしょうか。また、今は、寄り道ができる人、余白に価値を感じられる人が求められる時代なのではないかとも思うのです。金儲けだけで道を突き進んでいくのではなく、ちょっと立ち止まって寄り道すると仲間ができる。利益を上げることだけが会社の使命だと考えているとなかなかそこに気づけません。手を取り合うことも難しくなってしまいます。

福田

お互いが求めるリソースを持っている企業同士だからというだけではなく、今の社会課題に取り組みたいという強い思いがあるかどうかが大きいような気がします。松本社長の仰る通りで、「儲かりそうだから」という動機だけだと長続きしないんですよ。何のために会社があるのか。なぜ今この仕事をするのか……。そこに共鳴できる人、企業と未来を創っていきたいと考えています。